畳の表面がささくれてきた、変色が目立つ、シミやカビが取れない。そんなときに考えるのが畳の張り替えです。
畳の張り替えには「裏返し」「表替え」「新調」の3つがあり、畳の状態と使用年数によって選ぶべき方法が変わります。費用も1枚4,000円程度から5万円近くまで幅があります。
この記事では、3つの違いと選び方、費用の目安、畳の素材とグレード、業者選びのポイントまでをまとめました。
裏返し・表替え・新調の違い
まずは3つの方法の違いを押さえましょう。畳は「畳表(たたみおもて)」「畳床(たたみどこ)」「畳縁(たたみべり)」の3つの部材でできています。どこまで交換するかが違いになります。
裏返し|畳表をひっくり返す
今ある畳表を外して裏返し、元に戻す方法です。畳表は両面を使えるように織られているため、裏面を表にすることで新品に近い状態に戻せます。
最も安く、最も短時間で済む方法です。日焼けや軽い傷、家具のへこみが気になる程度なら裏返しで十分なことが多くあります。ただし裏面にまでシミが染みている場合や、表面がささくれている場合は裏返しても改善しません。
表替え|畳表と畳縁を新品に交換する
畳床(芯材)はそのまま使い、畳表と畳縁だけを新しくします。見た目と香りは新品同様に戻りますが、踏み心地は畳床の状態のままです。
裏返しの時期を過ぎている場合や、裏返しをせずに長く使ってきた場合は表替えを検討します。畳床が傷んでいなければ、新調より費用を抑えられます。
新調|畳をまるごと入れ替える
畳床を含めて、すべてを新しい畳に交換します。踏むとフカフカする、部分的に沈む、大きく波打っているといった症状は畳床の劣化が原因なので、新調でなければ直りません。
ダニが繰り返し発生する場合や、和室をリフォームして雰囲気を変えたい場合も新調が向いています。
張り替えの時期の目安
一般的な目安は次のとおりです。
- 裏返し:新品から2〜5年
- 表替え:裏返しから4〜7年(裏返しをしていない場合は5〜7年)
- 新調:10〜15年
ただしこれはあくまで目安です。実際の交換時期は年数ではなく、畳の状態で判断してください。人の出入りが多い部屋では2〜3年で傷むこともありますし、来客用の和室でほとんど使っていなければ20年もつこともあります。
判断に迷う場合は、写真を撮って畳店に相談するのが早道です。裏返しで済むものを新調してしまうと、余計な出費になります。
費用の目安
費用は畳表のグレードと畳のサイズ規格で決まります。意外に見落とされがちなのがサイズです。
まず自宅の畳のサイズ規格を確認する
畳の大きさは地域によって異なり、同じ「1畳」でも面積が違います。
- 江戸間・五八間・団地間:おおよそ 88cm × 176cm 以下。関東や集合住宅で一般的
- 本間・三六間・六一間:おおよそ 97cm × 194cm 以下。関西や西日本で一般的
本間は江戸間より2割ほど大きいため、同じグレードでも3,000円前後高くなります。見積もりを取る前に、メジャーで実測しておくと話が早く進みます。
方法別の費用相場
- 裏返し:1枚 4,000〜6,000円程度
- 表替え:1枚 5,000〜35,000円程度(グレードによる幅が大きい)
- 新調:1枚 10,000〜50,000円程度
表替えの下限は普及品の中国産い草を使った場合です。国産い草や和紙・樹脂などの機能性素材を選ぶと、表替えで12,000〜35,000円、新調で24,000〜49,000円程度が実勢の価格帯になります。
このほか、家具の移動費、薄畳への対応、切り欠け加工、エレベーターのない集合住宅での搬入など、条件によって追加費用が発生することがあります。見積もりの段階で、既存の畳の処分費が含まれているかもあわせて確認してください。
畳替えを申し込む(イケヒコ公式通販) 国産い草・和紙・樹脂から選べます。サイズ規格別に価格が明示されています。
作業にかかる時間
裏返しと表替えは、朝に引き取って夕方に納品という「日帰り」で対応できる業者が多くあります。新調は畳床から作るため、2日から10日程度かかることが一般的です。
作業中はその部屋が使えません。新調の場合は日程に余裕をもって依頼してください。
畳表の素材で選ぶ
近年は天然のい草以外にも選択肢が増えています。暮らし方に合わせて選べるようになりました。
い草|香りと調湿性
昔ながらの天然素材です。独特の香りにはリラックス効果があり、調湿性・消臭性にも優れています。湿気の多い時期に水分を吸い、乾燥すると放出するため、和室の空気を穏やかに保ちます。
一方で、日焼けによる変色は避けられません。また湿気がこもるとカビが発生することがあります。
和紙|色あせに強く手入れが楽
和紙を樹脂でコーティングして糸状にし、畳表に織り上げたものです。変色しにくく、水をこぼしても拭き取りやすいのが特長です。ダニやカビが発生しにくいため、小さなお子さんがいるご家庭や、日当たりの強い部屋に向いています。
カラーバリエーションが豊富で、縁なしの琉球畳にすると洋室にも馴染みます。ただしい草の香りはありません。
樹脂(ポリプロピレン)|水と汚れに強い
最も水に強く、汚れを拭き取りやすい素材です。ペットのいるご家庭や、飲食をする部屋に向いています。カビ・ダニの発生も抑えられます。
畳床の種類も確認する
表面だけでなく、芯材である畳床にも種類があります。
- 藁床(わらどこ):伝統的な素材。弾力性と調湿性に優れるが高価で重い
- 建材床:木質繊維板やポリスチレンフォームを使ったもの。軽く安価で、現在の主流
- 藁サンドイッチ床:藁と建材を組み合わせたもの。両者の中間的な性質
新調する際は、畳表だけでなく畳床の仕様も見積もりに明記されているか確認してください。
畳のグレードは何で決まるのか
同じ「国産い草」でも価格に差があります。グレードを決める要素は主に4つです。
い草の長さと産地
長いい草を使うほど、中央部の良質な部分だけを使えるため、色が揃って美しい畳表になります。短いい草は根元や先端が混ざり、色ムラが出やすくなります。
産地では熊本県八代産が国内最大の産地として知られています。国産い草は吸湿性に優れ、耐久性も高い傾向があります。一方で安価な輸入品は、湿気を吸いきれずカビやすい、変色が早いといった差が出ることがあります。
経糸(たていと)の品質と本数
い草を織り込む糸を経糸といいます。糸が丈夫で本数が多いほど、い草を密に詰められて丈夫な畳表になります。麻糸を使ったものは綿糸より強く、上級品に用いられます。表面の目が揃って美しい畳は、この経糸の品質が高いものです。
製造方法
職人が一枚ずつ手作業で仕上げた畳は高価ですが、い草の向きや色合いを調整するため仕上がりが美しくなります。現在は機械製が主流で、品質も安定しています。価格を重視するなら機械製、仕上がりにこだわるなら手作業と考えてよいでしょう。
自分で張り替えられるのか
結論として、畳の張り替えを自分で行うのはおすすめできません。
畳表を張るには専用の道具と技術が必要で、糸の締め具合ひとつで仕上がりと耐久性が変わります。道具を揃える費用と手間を考えると、業者に依頼したほうが結果的に安く、確実です。
また、畳は1枚あたり20〜30kgあり、藁床ならさらに重くなります。一人での作業や、無理な姿勢での持ち上げはケガの原因になります。
自分でできるのは、小さな傷やほつれの応急処置までと考えてください。市販の補修シールやヘリ補修テープで対応できます。
業者選びで確認したいこと
畳の張り替えは価格差が大きく、業者選びが仕上がりを左右します。次の点を確認してください。
- 相見積もりを取る:同じ条件で2〜3社に依頼し、相場を把握します。高すぎるのはもちろん、極端に安い業者も注意が必要です
- 畳表の産地とグレードが明記されているか:「国産い草」だけでは判断できません。産地と等級まで示す業者は信頼できます
- 畳製作技能士の資格者がいるか:国家資格であり、技術の客観的な裏付けになります
- 見積もりに含まれる範囲:家具の移動、既存畳の処分費、追加料金の条件を確認します
- 当日の流れ:引き取りと納品の日時、部屋を空けておく時間を事前に確認します
よくある質問
賃貸住宅でも畳を張り替えていいですか
必ず事前に管理会社や大家さんへ確認してください。畳は建物の一部とみなされることが多く、無断で交換するとトラブルになります。
なお退去時の畳の張り替え費用は、経年劣化によるものであれば貸主負担が原則です。入居者の過失による損傷は借主負担となります。判断に迷う場合は、国土交通省の原状回復ガイドラインが参考になります。
一部の畳だけ張り替えられますか
可能です。ただし新しい畳表と古い畳表では色が大きく異なるため、同じ部屋の中で差が目立ちます。日当たりによる焼け具合も異なるため、部屋単位で揃えるほうが仕上がりはきれいです。
畳を洋室風にできますか
和紙や樹脂の畳表を使い、縁のない琉球畳にすると洋室にも馴染みます。カラーバリエーションも豊富で、市松に敷くとモダンな印象になります。手軽に試したい場合は、フローリングに敷く置き畳という選択肢もあります。
まとめ
畳の張り替えについて、要点を整理します。
- 方法は裏返し・表替え・新調の3つ。畳の状態で選ぶ
- 目安は裏返し2〜5年、表替え5〜7年、新調10〜15年。ただし年数より状態で判断
- 費用は畳表のグレードとサイズ規格(江戸間か本間か)で決まる
- 素材はい草・和紙・樹脂から、暮らし方に合わせて選べる
- DIYは現実的ではない。相見積もりを取って業者に依頼する
畳を新しくすると、部屋の印象と空気が変わります。使用年数が10年を超えているようであれば、一度畳店に見てもらうことをおすすめします。
和室全体の設えを考えたい方は、畳・い草のまとめもあわせてご覧ください。