仏教・禅の智慧とは?智慧と知恵の違いについて

智慧(ちえ)とは

智慧(ちえ)とは?
智慧を辞書で調べてみると、「物事の筋道が分かり、うまく処理していける能力」と書いてあります。あまりこの漢字の智慧にはなじみがないかもしれませんが、知恵と非常に似ている意味になっています。また、細かな違いは下で解説しているので、そちらをご参照ください。 また、智慧というのはもともと、仏教の言葉です。日常生活で使う言葉の中には様々な形で仏教の言葉が入り込んでいるのですが、智慧(知恵)もその一つなのです。

仏教の智慧の意味

日常生活でよく使う意味は確かに上記の通りなのですが、仏教で使う智慧は少し意味が異なります。 端的に言うと、智慧は仏教では様々な「気づき」を指します。知識は知ることや勉強などによって得られるかもしれませんが、智慧は違います。体験や経験などから得るものです。つまり智慧は、学校の授業などで得られるものではなく、スポーツなどを実際に行うことによって体感をもって何かが分かるということです。 経験による様々な気づきにより、今まで気づかなかった角度や視点でモノゴトをとらえることができるようになります。 このような発見や気づきというのは、単に何かを得るということだけでなく、自分自身の心が変化してきた証拠です。 それは何事にも代えがたい変化であり、自分自身がさらに成長していけるのを手伝ってくれます。

この気づきというのは仏教の祖であるブッダも数多く体験しています。瞑想により得た智慧を記憶にとどめ、瞑想から出て行動に変換していきました。 つまり、この智慧というのは生活を豊かにしていくのに欠かせないものなのです。

智慧と知恵の違いについて

智慧と知恵の違いについて
智慧と知恵は似ていると上で書いていますが、それは日常生活で使う上においてはという仮定のお話です。 仏教の世界ではこの二つの言葉は違う意味を持つようになります。 まず、知恵という言葉は大きく2つの意味があります。1つは、物事について考えたり判断したりする頭の働きのことです。 「知恵がついてきた」「知恵が働く」などはこういった意味で使われています。 そしてもう1つは、アイデアのことです。「知恵が回る」とか「知恵を絞る」というのは「知恵=アイデア」という意味で使われています。 以上のことから知恵というのは一般的には頭の良さを表す言葉だと考えておいてください。 秀逸なアイデアが出る人も、物事の判断が素早く正確な人、どの方法が最も自分にとって最適かの結論を導き出せる人は、知恵のある人であり、世間的には頭が良い人だとされています。

一方、智慧の意味は知恵とは一線を画します。智慧というのは真実がどのようなものかを探る頭の働きです。 目先の利益などではなく、もっともっと深いものを見ているイメージです。 「真実とは何だろうか…」「幸せとは何だろうか…」そのようなことを考えるのが智慧なのです。 つまり、ただ賢いというだけではありません。モノゴトの本質を見極めようとするのが智慧なのです。 つまり、二つの「ちえ」をざっくり表すと、損得の判断を行うのが知恵でモノゴトの真偽、善悪を見抜こうとするのが智慧だということになります。

智慧と慈悲の違いについて

仏様は、智慧と慈悲を身に着けている状態です。今まで智慧はさんざん解説してきましたが、慈悲とはどういうものなのでしょうか? 慈悲とは他の生命に対して楽を与え、苦を取り除くことです。智慧と慈悲の違いはよく、子育ての話でたとえられます。 子供が悪いことをしてしまったときに厳しくしかりつけてそれがいけないことだと教えることが、智慧。 一方、しかるだけでなく抱っこなどでスキンシップを図り、子供に楽しさや安心感を与えるのが慈悲です。

これらは、どちらか一方だけあってもだめなもので2つのバランスが非常に重要です。 叱られてばっかりだと、子供は「自分は悪い子なんだ」と感じて自己肯定感が下がってしまいます。 一方、甘やかしてばっかりだと世間の常識や善悪に気づけず、ドラ息子となってしまう可能性があります。 慈悲と智慧は二つとも欠かせないものなのです。両方を身に着けることにより人間的にさらなる高みを目指すことができます。

智慧の実践について

智慧の実践について
智慧が人間性を高めていくうえでとても重要になってくるというのは今まで述べてきた通りです。 では、日常生活の中で智慧を身に着けるにはどうすればよいのでしょうか? その答えは掃除です。 ブッダは、仏道修行の基本として掃除を進めています。 部屋や自分の持ち物、バッグなどが汚れていたり、散らかったりしているのは、自分の心が乱れているということも表しています。

つまり、机や部屋が汚いと心まで整っていないということになるのです。 こまめに掃除を行うことによって自然と自分の心も落ち着いていくようになり、智慧の習得に一歩近づくことができます。

六波羅蜜(ろくはらみつ)とは

六波羅蜜(ろくはらみつ)とは
六波羅蜜とは、大乗仏教で課せられた6種の実践徳目です。その6種は以下の通りです。
  • 1)布施(ふせ)…親切
  • 2)持戒(じかい)…言行一致
  • 3)忍辱(にんにく)…忍耐
  • 4)精進(しょうじん)…努力
  • 5)禅定(ぜんじょう)…反省
  • 6)智慧…真理を知る
それぞれについて詳しく定められているのが六波羅蜜なのです。これらを長い年月をかけながら習得していくことで悟りを開けるようになると考えられています。 確かに、上記の6つのことに秀でている人は世間的にも評価される傾向にあると思います。親切心があり、言うこととすることが一致しており、感情に振り回されず心を静め、目標に向かって努力している。言葉に起こすだけで素晴らしい人だということが伝わります。 すべてを完璧に身に着けるのが難しいというのが人間というものです。しかし、修行僧はそんな存在になれるように日々修行に取り組んでいます。

まとめ

今回は仏教の言葉である智慧を解説していきました。仏教は生活に寄り添っている教えがたくさんあり、実行していくことで、心を調え生活を豊かにしていくことができます。 確かにすべてを完璧にするのは難しいかもしれませんが、少しでも人間性を高めるために、机や部屋の掃除を日ごろから行えるようになるとよいですね。

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