襖が黄ばんできた、破れてしまった、部屋の印象を変えたい。襖の張り替えを考えるきっかけはさまざまです。
襖の張り替えには、自分で行う方法と業者に依頼する方法があります。費用はDIYなら1枚1,000円台から、業者依頼なら3,000〜6,000円程度が目安です。どちらが向いているかは、襖の状態と求める仕上がりによって変わります。
この記事では、張り替えの時期の見極め方から、襖紙の選び方、自分で張り替える手順、業者に依頼する際の注意点までをまとめました。
襖を張り替える時期の目安
襖の張り替えは10年が一つの目安とされています。ただし品質や使用状況によって劣化の速度は大きく異なるため、年数にこだわらず状態で判断するのが現実的です。
年数に関わらず張り替えたいサイン
次のような状態になったら、時期を待たずに張り替えを検討してください。
- 汚れ・黄ばみ:直射日光の当たる場所や喫煙する部屋は黄ばみが早く進みます
- 日焼けによる褪色:全体が茶色っぽくなり、柄が薄れて見えます
- 破れ・穴:内部の枠組みがむき出しになると見た目が悪いだけでなく、ケガの原因にもなります
- 部屋の印象を変えたい:襖紙のデザインを変えるだけで和室の雰囲気は大きく変わります
液体をこぼした汚れは、表面だけに見えても内部まで浸透していることがあります。放置するとカビの原因になるため、気になる場合は業者に相談してください。
また、婚礼行事やお正月など人が集まる予定があるときも、張り替えの良い機会です。「和室の風格は襖が決める」といわれるほど、襖は部屋の印象を左右します。
作業に適した季節は「湿度の高い日」
意外に思われるかもしれませんが、自分で張り替えるなら湿度の高い時期が向いています。襖紙は湿気を含むと伸びやすく、ピンと張った仕上がりになりやすいためです。
梅雨どきや夏場、あるいは雨の日が狙い目です。逆にエアコンで室内が乾燥していると紙が伸びにくくなります。作業中はエアコンを止め、乾燥が気になる場合は加湿器を使うか、霧吹きで室内の湿度を上げてから始めてください。
まず自分の襖の種類を確認する
襖には構造の違いがあり、種類によって自分で張り替えられるかどうかが変わります。作業に入る前に確認しておきましょう。
- 本襖(ほんぶすま):木の骨組みに紙を何層も重ねた伝統的な構造。重ね貼りができ、DIYに向く
- 戸襖(とぶすま):片面が襖紙、もう片面が洋室向けの仕上げ。下地がベニヤ板のため扱いが異なる
- ダンボール襖:芯材にダンボールを使った量産品。強度が低く、重ね貼りに向かない
- 発泡スチロール襖:軽量な量産品。アイロンタイプの襖紙は熱で芯が変形するため使えない
襖の縁を持ち上げてみて軽ければ量産品、ずっしり重ければ本襖の可能性が高いといえます。判断がつかない場合は、無理をせず業者に相談するのが確実です。
襖紙の種類と選び方
襖紙は「素材」と「貼り方」の2つの軸で選びます。自分で張り替えるなら、貼り方のタイプが仕上がりを大きく左右します。
素材で選ぶ
襖紙の素材は、大きく和紙・織物・ビニールの3種類に分かれます。
和紙は最も一般的な素材です。手漉きで作られた最上級のものは「本鳥の子(ほんとりのこ)」と呼ばれ、機械漉きのものは「鳥の子」、さらに大量生産に適した簡易なものは「新鳥の子」と呼ばれます。グレードが高いほど丈夫で長持ちします。価格だけで選ぶと劣化が早い場合があるため注意してください。
織物はレーヨン糸や絹糸を使ったもので、破れにくく丈夫です。施工時にシワになりにくいため、自分で張り替える場合にも扱いやすい素材です。
ビニールは最も丈夫で、水拭きもできます。小さなお子さんやペットがいるご家庭に向いています。
貼り方のタイプで選ぶ
自分で張り替える場合、こちらの選択が難易度を決めます。
- のりで貼るタイプ:最も一般的。仕上がりは良いが、のりを作る手間がかかる
- 裏面にのりが付いたタイプ:水で濡らすとのりが戻る。水をムラなく塗る必要があり、意外に難易度が高い
- アイロンタイプ:熱でのりを溶かして接着。初めての方に最も扱いやすい
- シールタイプ:裏面がシールで、そのまま貼れる。部分補修にも使える
なお、襖本体がプラスチックやビニール製の場合はアイロンタイプが使えません。作業前に襖の素材を確認してください。
デザインで選ぶ
和室にそのまま馴染ませたいなら和のデザインを選びます。華やかな模様から単色まで幅があり、明るく柔らかい色を選べば古めかしさのないすっきりした印象になります。
近年は洋のデザインも豊富です。花柄・幾何学模様・北欧柄などがあり、和室を洋室として使いたい場合や、あえて和と洋を組み合わせて「和モダン」に仕上げたい場合に向いています。襖紙にこだわらず、壁紙を貼る方も増えています。
自分で襖を張り替える手順
ここではのりを使う一般的な襖紙で、6つの手順を解説します。アイロンタイプやシールタイプの場合は、商品の説明に従ってください。
用意するもの:襖紙、専用のり、刷毛、カッター、定規、バール(釘抜き)、カナヅチ、養生用のシート
1. 引き手を取り外す
襖を床に寝かせ、引き手を外します。釘が使われていないものは、バールを差し込むだけで外せます。釘で固定されている場合は、釘の付近にバールを差し込み、ゆっくり引き上げて抜きます。
2. 枠を取り外す
上下左右がわからなくならないよう、あらかじめテープで目印をつけてから外します。枠と襖の間にバールを差し込み、少しずつ余裕を作ります。釘の付近を狙うと外しやすくなります。
ある程度隙間ができたら、ゆっくり揺らすようにして枠を外してください。力任せに引くと枠が割れることがあります。
3. のりを準備する
襖用または障子用ののりを、説明書きに従って溶きます。刷毛にまったりと馴染む程度が目安です。浅めのタッパーなどに入れておくと、作業中に継ぎ足しやすくなります。
4. 補修紙・茶チリ紙を貼る
穴や大きな破れがある場合は、先に補修紙を貼ります。破れた部分に補修紙をあて、形に合わせて切り取ってのりで接着します。ハサミで切るより手でちぎったほうが周囲と馴染み、仕上がりに段差が出にくくなります。
その上から茶チリ紙を貼ると補修跡が目立たなくなります。茶チリ紙は本来、襖全体に貼るものですが、手間に感じる場合は省いても構いません。
5. 襖紙を貼る
襖紙の位置を決め、しっかり伸ばした状態でカットします。のりは薄く均一に塗り、枠が当たる縁の部分は特にしっかり伸ばしてください。
襖紙を裏返して慎重に重ね、中央から外側へ空気を抜きながら接着します。この時点でシワがあっても問題ありません。のりが乾く過程で紙が縮み、ピンと張ります。
乾く前に、引き手の位置にカッターで切り込みを入れておきます。
6. 枠と引き手を戻す
最後に枠と引き手を取り付けます。枠は元の釘穴を目安に合わせ、カナヅチで打ちます。引き手に釘を使わないタイプは接着剤で固定します。
釘で留める場合は、釘の頭に当て木をしてから叩くと、引き手に傷をつけずに固定できます。
業者に依頼する場合
きれいに仕上げたい、枠まで傷んでいる、枚数が多いといった場合は業者への依頼が確実です。表面の襖紙だけでなく、内部の下地や枠の補修まで対応できます。
費用の目安
業者に依頼する場合の費用は、襖紙のグレードと片面か両面かで決まります。片面だけなら安く済みますが、両面が見える位置の襖は両面張り替えることが多く、その場合は倍近い金額になります。
一般的な価格帯の目安は次のとおりです。
- 標準タイプ(プリント襖紙):片面 6,000円前後/両面 11,000円前後
- 糸入りタイプ(織物):片面 8,000〜9,000円/両面 15,000円前後
- 高級品タイプ(上新鳥の子):片面 10,000円前後/両面 18,000円前後
- 天袋・地袋:小さいため、上記より2,000〜3,000円ほど安くなります
これに加えて、木枠が傷んでいる場合の修繕費、桟の交換費、枚数が少ない場合の割増料などがかかることがあります。傷みが激しいときは、張り替えるより襖ごと新調したほうが安く済むこともあるため、見積もりの段階で確認してください。
自分で張り替える場合は襖紙代のみで、1枚あたり1,000〜3,000円程度が目安です。費用は3分の1以下に抑えられますが、仕上がりと手間は業者に及びません。客間など人目に触れる場所は業者、納戸や子供部屋は自分で、といった使い分けも現実的です。
襖の張り替えを申し込む(イケヒコ公式通販) プリント・織物・上新鳥の子から選べます。天袋・地袋にも対応。
業者選びで確認したい3点
- 実績があるか:口コミや施工例を確認します。「誰が作業するのか」を明示している業者のほうが安心です
- 料金が明確か:電話見積もりではなく、実際に見てもらったうえでの見積もりが確実です
- 希望の襖紙を扱っているか:取り扱いの幅は業者によって差があります
襖は木枠の状態によって想定外の修繕が必要になることがあります。事前に現物を確認してもらうことで、追加請求のトラブルを避けられます。
当日の流れを確認しておく
業者によって作業の進め方が異なります。契約時に確認しておきましょう。
- その場で張り替える
- 襖を持ち帰り、工場で張り替える
- 駐車場や庭など、屋外の作業スペースで張り替える
襖の張り替えは場所を取ります。自宅で作業する場合は十分なスペースを空けておいてください。持ち帰りの場合は、納品までの日数も確認しておくと安心です。
賃貸住宅の場合の注意点
賃貸物件では、張り替える前に管理会社や大家さんへ確認してください。原状回復の義務があるため、張り替えを断られることがあります。
許可が下りた場合や、原状回復が求められる場合は、アイロンで貼る「剥がせる襖紙」が便利です。アイロンの熱で接着し、再びアイロンを当てるとのりが溶けてきれいに剥がせます。
なお、退去時の襖の張り替え費用は、経年劣化によるものか入居者の過失によるものかで負担者が変わります。破損させてしまった場合は、早めに相談しておくほうが穏便に進みます。
よくある質問
片面だけ張り替えることはできますか
できます。ただし片面だけ新しくすると、反対側との差が目立つことがあります。両面が見える位置にある襖は、同時に張り替えるほうが仕上がりに統一感が出ます。
襖紙の上から重ね貼りしても大丈夫ですか
襖はもともと何層もの紙を重ねた構造なので、重ね貼りは可能です。ただし何度も重ねると厚みが出て、枠に収まりにくくなったり、たわみの原因になったりします。数回重ねている襖は、下地から張り替えるか新調を検討してください。
戸襖(とぶすま)も同じように張り替えられますか
戸襖は片面が襖紙、もう片面が洋室向けの仕上げになっている建具で、和襖とは構造が異なります。ベニヤ板を下地にしているため、和襖と同じ手順では対応できないことがあります。詳しくは戸襖とは?和襖との違いを解説をご覧ください。
まとめ
襖の張り替えについて、要点を整理します。
- 張り替えの目安は10年。ただし汚れ・日焼け・破れがあれば年数に関わらず検討する
- 自分で張り替えるなら湿度の高い日が向く。初めてならアイロンタイプが扱いやすい
- 業者依頼は1枚3,000〜6,000円程度。枠の補修が必要なら別途費用がかかる
- 賃貸は事前確認が必須。剥がせる襖紙という選択肢もある
襖は部屋の印象を大きく左右する建具です。破れや黄ばみが気になってきたら、まずは1枚から試してみてはいかがでしょうか。手順さえ押さえれば、想像よりも手が届く作業です。
和室全体の設えを見直したい方は、和室づくりのまとめもあわせてご覧ください。