シリーズ「くらしの年表」こたつの歴史 第2回
シリーズ「くらしの年表」では、私たちの生活の身近にある「もの」についての歴史を紹介していきます。
連載 こたつの歴史 第2回「華麗なるこたつ」
置きこたつの登場
江戸時代になると、熱源を囲炉裏から火鉢に代用する事で自由な移動が可能になった「置きこたつ」、囲炉裏の位置を床より下に下げ、足を伸ばせるようになった「掘りこたつ」、さらには囲炉裏の周囲も床より下に下げる事で大人数が入れる事が可能となった「大こたつ」など、様々なバリエーションのこたつが登場した。
忍藩(現在の埼玉県)の下級武士、尾崎石城が記した絵日記「石城日記」には、江戸時代の武士たちがこたつを使用している様子が描かれている。
大きさから見て置きこたつと推測できるが、現在のこたつとさほど変わりのない形であることが見て取れる。
こたつ布団の登場
木綿問屋の台頭など、「綿産業」が町民の間で広まったのもこの時代である。それに準じて、木綿布団の生産が開始されたのもこの時代である。ちなみに、現在のかい巻き布団の原型とされる「夜着」が誕生したのもこの頃である。
先の「石城日記」にも、「こたつ布団」と思わしきものが描かれている。衣服を代用していた頃とはえらい違いである。
しかし、木綿製の布団の当時の値段は1枚三十両。現在の価値で600〜900万円にもなる高級品であり、火事の際は一番に布団を持って逃げたという逸話も存在する。
このような理由から、一般的な寝具として使用されていた紙襖に藁を入れた布団を使用していたのではないかと考えられる。
生活の知恵からの発展
どちらにせよ、衣類をこたつ用の布団として代用していた時代から、寝具としての布団を「こたつ布団」として使用しだした時代へと変化していったことは定かである。
このように、室町時代に誕生した生活の知恵であったところのこたつも、世相の変化や生活文化の発展と共に、その姿・形を徐々に変えていったのである。
編集後記
今回は、こたつの発展について解説しました。
有名な童謡「ゆき」のこの1節を誰しもが聞いたことがあると思います。
犬は喜び 庭駆けまわり、
猫は火燵(こたつ)で丸くなる引用:ゆき/作詞・作曲:不詳
幕末に活躍した浮世絵師の歌川国芳の「猫飼好五拾三疋(みゃうかいこうごじゅうさんびき」にも、そんなかわいらしい猫の姿が描かれています。
お分かりになりましたか?よーく見てみましょう。
当時、全国に53個あった宿駅の名前にちなんだ猫たちを描いた本作。「草津」を「こさつ→こたつ」に鈍らせて、こたつで丸くなる猫を洒落っぽく描いています。
猫の習性は、今も昔も変わらないのでしょうね。
次回は、明治時代のこたつについてご紹介致します。ご期待ください。
担当:株式会社イケヒコ・コーポレーション 伊東朋宏