京都の先染め織物、西陣織とは?西陣織の特徴と歴史について

京都の先染め織物、西陣織とは?西陣織の特徴と歴史について
先染め織物の「西陣織」は、京都の長い歴史を持つ伝統工芸品です。 そんな美しい西陣織に興味がある人も多いでしょう。しかし、なかには詳しい特徴や歴史、作業工程を知らない人も多いのではないでしょうか。

この記事では「西陣織」に関する特徴や歴史について詳しく解説しています。 西陣織の帯や着物の選び方も説明しているので、ぜひチェックしてみてください。

西陣織の特徴

西陣織の特徴
先染め織物の西陣織は、京都で生まれた絹製の織物です。 紗(しゃ)・羅(ら)という半透明の生地のほか、風通という素材を組み合わせて織り込んでいくのが特徴であり、型崩れしない頑丈なつくりの織物となります。

また、西陣織には次に示す12種類の技術があり、それぞれ緻密に計算された模様が描かれていきます。
  • • 綴(つづれ)
  • • 経錦(たてにしき)
  • • 緯錦(ぬきにしき)
  • • 緞子(どんす)
  • • 朱珍(しゅちん)
  • • 紹巴(しょうは)
  • • 風通(ふうつう)
  • • 綟り織(もじりおり)
  • • 本しぼ織り(ほんしぼおり)
  • • ビロード
  • • 絣織(かすりおり)
  • • 紬(つむぎ)
模様の中には、植物や自然、生き物が表現されており、あらかじめ着色された絹の糸を織り込んで作られます。 中でも折り込みの細かさに優れる「綴(つづれ)」は、複雑な模様を表現するのに1日で1cm²程度しか進みません。

素材の織り込み数は種類によって違い、職人の工夫によって現在でもバリエーションが増え続けています。

西陣織の歴史と由来

西陣織の特徴
西陣織の歴史はかなり古く、この織物の基は、紀元前1580年の古代エジプトまでさかのぼることができます。

日本に織物文化がやって来たのは、西暦500~600年頃だと言われており、渡来人によって、蚕(かいこ)が日本に運び込まれてきたことをきっかけとして、絹織物の技術が伝わりました。

それからは技術の発展が早く、日本全国に絹織物の技術が広がっていきます。 平安時代に入る頃には、高級絹織物の職人が京都で「織部町」という町をつくるほど織物技術が盛んになりました。

その後、町は次々と発展を遂げ、室町時代に入った頃には、織物の巨大な組織「大舎人座」が誕生し、時代を駆け抜けて「西陣」という地域が生まれていったそうです。

この頃になると、生産商品のブランディングが盛んに行われるようになり、西陣織も例にもれず、その独特なデザインにより、全国各地に名前が知れ渡っていきます。

明治時代以降に入ると、海外から衣類関連の素材が入ってくるようにもなり、織物工場の機械化や、海外の織物繊維が利用されるようになるなど、西陣織のバリエーションが増えていったのです。

そして、現代になると、日本古来の伝統的な織物だけでなく、海外向けに洋風着物やカーペットといった西陣織のインテリアなど、時代の流れに合わせて製品製造が行われています。

西陣織ができるまで

西陣織ができるまで
素材を何度にも重ねてつくる西陣織は、先染め織物がつくりだす模様のことを考えながら職人の手によって絹の糸が織り込まれていきます。 まるで昔話に登場する「鶴の恩返し」の鶴が、機織りを行うかのような作業で作り上げられていく西陣織ですが、この伝統工芸品はどのような工程で作成されているのでしょうか。

ここでは、5つの工程で生み出される西陣織について、各工程ごとの内容を詳しく解説していきます。 職人の手によって丹精込めて作り上げられた西陣織の魅力を知るために、ひとつずつ見ていきましょう。

製紋

まずは織物にどのような模様・デザインを表現するのか人の手によって「製紋」が行われます。 製紋では、筆や絵の具を用いて職人がひとつずつ柄を決めていくことが多く、西陣織は職人の経験と技術が生きる伝統工芸品だということがうかがえます。

デザインが出来上がったら、その製紋をコンピュータグラフィックスに読み込ませます。 古い時代には手織りされていましたが、明治時代以降は西陣織の機械化・自動化が進み、コンピュータに読み込ませたデータをもとに織物を作り上げていきます。

原料の準備

西陣織は様々な色合いの糸を組み合わせて作る織物であることから、織機に事前に染め上げられている糸を細かく当て込んでいきます。

西陣織は、機械織の際に何百もの織を同時に行っていくことから、一つでも間違えてしまうと、イメージしていたデザインと異なる柄が出来てしまいます。

正確性が求められる作業であることから、何度も確認が行われたのち、先染めされた糸を準備していくのです。

織機の準備

機械化が進んでいる西陣織は、縦横に織を行うことから、糸が通る道筋を用意する必要があります。 ただ糸を設置するのではなく、正しく織り込まれていくように、糸を引き上げるための「綜絖」の準備が必要です。

製織

各種準備が完了したら、実際に織物を作り上げていきます。 伝統的な織り方としては「手機」と呼ばれる手作業の織物がありますが、場所によっては機械を用いて自動織り込みを行って製織を行います。

前者は職人の手による柄の「味」を楽しむことができ、後者の場合は柄の「統一感」を楽しめるという特徴があります。

仕上げ

西陣織は織り込んですぐに完成するというわけではなく、最後に仕上げ作業が必要です。 織り込んだ糸の色味に自然感を出すために、蒸気の中に織物を通す「整理加工」が行われたり、糸の毛羽立ちを防止するために「線切り」を行うといった細かい作業を経て西陣織が完成します。

西陣織の帯と着物の選び方

西陣織の帯と着物の選び方
西陣織は、織物として販売されているだけではなく、帯や着物に加工されて販売されることも多くあります。 なかには、西陣織に興味を持ち、一度着てみたいと考えている人も多いでしょう。 ここでは、西陣織の帯解き物の選び方について、2つのチェックポイントをご紹介します。

自分に合った西陣織を選ぶためにも、ひとつずつ見ていきましょう。

証紙のチェック

西陣織はどのお店でも作れるわけではなく、ブランドとして認定されたものだけが「西陣織」と名乗ることができるのです。

西陣織には、1974年に公布された「伝産法」に基づいて作られた「証紙」が付けられ、これが西陣織の証です。 正しい西陣織の着物を着たいのなら、まずはこの証紙があるかチェックしてみましょう。

証紙にはそれぞれ番号が設けられており、万が一のトラブルでも証紙に書かれた管理番号があれば生産者が分かる仕組みとなっています。

帯は西陣証紙をチェック

西陣織の中でも帯を着用したいのなら、証紙のひとつである「西陣証紙」をチェックしましょう。

西陣証紙は、西陣織工業組合が発行している眼鏡型の「証紙」が貼られており、この証紙が張り付けてあるものだけが正式な西陣織として販売されます。

「西陣」「西陣織」「帯は西陣」という言葉などは、西陣織工業組合が商標登録を行っているため、その証明として西陣証紙が重要なのです。

まとめ

以上、京都から生まれた伝統工芸品「西陣織」の特徴や歴史、作業工程、そして西陣織の選び方について解説しました。

現在では、和服を着る機会が減ってきていますが、京都観光を楽しむときに和服を着たいと考える人も多いでしょう。 京都には西陣織の帯や着物をレンタルできる場所もあり、歴史を感じるような肌触りの良いオシャレな織物を着て観光を楽しめます。

また、西陣織はカーペットといったインテリアとしても販売されているため、この機会に西陣織の利用・購入を検討してみてはいかがでしょうか。
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