お寺と神社の違いについて

お寺と神社の違いについて
日本人の生活の近くにある「お寺」や「神社」ですが、この違いが分からない人も多いでしょう。 じつは、この2つの名称、もともとは同じものとして扱われており、時代の流れに合わせて分離していったのです。

この記事では「お寺」と「神社」の違いについて、宗教、定義、参拝の方法という3つの視点から解説していきます。 身近にある建物の違いを理解するためにも、ぜひチェックしてみてください。

お寺と神社の違いとは?

お寺と神社の違いとは?
「お寺」と「神社」は、名称が異なるため別物だということを知っている人は多いと思います。しかし、その見た目が似ていることが関係して、詳しい違いを知らない人も多いでしょう。

まず、お寺と神社を作るきっかけとなったのが「宗教」です。日本に宗教の考えが生まれたのは、縄文時代の終わりからと言われています。ただこの時代には祠(ほこら)のようなものがあるだけで、建物としてのお寺・神社が生まれたのは西暦538年に仏教という文化が入って来てからです。

今から1500年以上も前からあるお寺・神社ですが、じつは江戸時代まで、お寺と神社にわけがなく、明確に分かれたのは明治時代に入ってからなのです。

この記事では、明治時代に分かれたお寺と神社の違いについて3つのポイントから詳しく解説しています。
  • ・宗教
  • ・定義
  • ・参拝方法
それぞれ歴史を紐解きながら解説していくので、ひとつずつ見ていきましょう。

宗教の違い

宗教の違い
お寺と神社の違いのひとつに「宗教」が関わっています。

もともと日本に根付いていた「神道」という考え方、そして後からやって来た「仏教」という考え方が合わさり、神仏習合によって生まれた神社でしたが、明治時代には政府より出された神仏分離政策である「神仏判然令」によって、その違いが明確になりました。

一度合わさり、再度別々になった面白い宗教感が持つ、それぞれの違いについて見ていきましょう。

神道

神道とは、縄文時代の終わり~弥生時代にかけて大陸から伝来してきた宗教です。 この宗教は、自然すべてを神様として捉える「自然信仰」という考えで信仰されています。

八百万の神様という言葉も、この考え方をもとに生まれ、お米の一粒一粒にも神様が宿っていると考えられており、昔話にもそのお話が登場します。 また神道には、具体的な教えや教典というものがなく、開祖も存在しません。 自然すべてが神様だという考えがあるため、その捉え方は人それぞれでした。

もちろん神道においても神社が作られましたが、まつられている神様は次のようにバラエティに富んでいます。
  • ・八百万の神様
  • ・自然(山・河・樹木・石等)
  • ・歴史的な重要人物(皇族や武神等)
神道では、神社というものが建てられ、その神社は神主や巫女によって管理されていました。

仏教

仏教とは、紀元前約500年の時期にインド北部で生まれた宗教であり、西暦538年に日本に伝来してきました。

この宗教の考え方は、苦しみという未来永劫続く「輪廻転生」を修行によって抜け出すというものであり、神道とは異なり、明確な崇拝対象に「仏陀」「仏様」がいます。

仏教には具体的な教えと教典があり、人々はそれに基づいて仏教を信仰していきました。

仏教の場合は寺院(今で言うお寺)というものが建てられ、管理者である「僧侶」「尼さん」「住職」が直接住み、仏教の勉強や修行を行います。

定義の違い

定義の違い
神道が基となった「神社」、仏教が基となった「お寺」は定義が明確に分かれています。 それぞれの定義の違いを理解し、お寺と神社の違いを見ていきましょう。

お寺

お寺は仏教の教えに基づき、苦しみから逃れる「悟りの道」を極めることが目的となっています。

つまり、悟りの修行を行うために造られた場所であることから、お寺では僧侶が住み、仏教の勉強や修行を励む場所と定義されます。 このとき、僧侶が行う勉強・修行は次の通りです。
  • ・座禅
  • ・お寺の掃除
  • ・教典の写経
一般的には仏教を学ぶこと、そして精神を鍛えることが修行であり、日本各地では次のような修行を行うお寺があります。
  • ・滝に打たれる「滝行」
  • ・冷たい川で身を清める「水行」
  • ・各地を渡り歩く「山岳修行」「お遍路」
地域特有の地形や文化を活かした面白い活動は、メディアでもよく取り上げられています。 なかには一般参加を行うお寺もあり、修行や勉強を体験できると、山奥のお寺を訪問する人が大勢います。

また、お寺によっては墓地を管理する場所があります。お盆やお彼岸に行うお墓参りでは、お寺に挨拶することが多くあります。

神社

神社は神道の教えに基づき、たてまつる神様に感謝する場所だと定義されてます。

お寺のように修行をする場所ではなく、神社を管理する神主や巫女によって、祭事や祈祷、行事ごとを行うのが一般的です。 神社によっては境内にご神木や岩などがあり、祭事の行い方や祈祷を行う場所などが異なるのが特徴です。

また、神社は一般の人々に解放されている施設であり、本殿に設けられた「拝殿」という場所でお賽銭、鈴を用いて神様に挨拶ができます。お正月の初詣では、お寺ではなく神社を利用するのが一般的です。

参拝方法の違い

参拝方法の違い
宗教や定義が異なるお寺と神社には、参拝方法にも違いがあります。

参拝方法には宗教特有のマナーというものがあるため、訪問する場所に合わせて参拝方法を間違えないように注意しましょう。 それぞれ手順を解説していくので、ぜひチェックしてみてください。

お寺

お寺における参拝方法は、次の手順となります。
  • 1. お寺の敷地へ入る際、山門で合掌して一礼(右足から踏み入れる)
  • 2. 手水を行い、参道を進む(参道の真ん中は歩かない)
  • 3. お賽銭を入れ、合掌し、一礼してお焼香をたく(お焼香は左手を添えてひたいに掲げる)
  • 4. 再度合掌し、一礼する
  • 5. 山門から出る際に合掌し一礼する
お寺では音を立てず合掌し、一礼するという流れで参拝工程が進みます。 お焼香をたくためのろうそくに火がついていない場合は、自身で火をつけ、参拝が終わったら手もしくは参拝所に置かれているロウソク消しで火を消します。

神社

神社における参拝方法は、次の手順となります。
  • 1. 鳥居をくぐる際に一礼し、気持ちを鎮めて邪念を払った後に足を踏み入れる
  • 2. 手水を行い、参道を進む(参道の真ん中は歩かない)
  • 3. 賽銭箱の前に来たら会釈し、お賽銭を入れる
  • 4. 二礼二拍手一礼をし、感謝・願いを伝える
  • 5. 鳥居から出る際に一礼する
お寺と違い、二拍手を行うなど、音を立てて参拝するのが神社の特徴です。 神社では火を扱うことはなく、神様に感謝を伝えるために願うだけとなります。 参拝する時には、常に神様に対して感謝することが大切ですので、ぜひ理解したうえで参拝に臨みましょう。

まとめ

以上、お寺と神社の違いを「宗教」「定義」「参拝方法」という3つの視点から解説しました。

日本に元々あった神道という文化が、後から伝来した仏教と組み合わさり同じものとして扱われていたお寺と神社ですが、明治時代の政策によって再度バラバラになり、現代のお寺と神社が生まれました。

日本らしい柔軟な宗教文化を受けた施設は、現代でも違う参拝方法が用いられています。 お寺と神社の違いを理解でき、参拝方法についても頭に入ったのなら、今後足を踏み入れる際に、その手順を実践してみてはどうでしょうか。
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