袴(はかま)とは?袴の種類と歴史について

袴(はかま)とは?袴の種類と歴史について
成人式や結婚式、そのほか季節のイベントで着用されている「袴(はかま)」 この服装の歴史、じつは弥生時代までさかのぼれることをご存じでしょうか? 今回の記事では、袴の歴史や特徴、種類など、袴に関する情報を詳しく解説しています。 あなたが思っているよりも奥が深い袴、この記事を読み終わった時には、袴を着用してみたくなっているかもしれません。

袴(はかま)とは

袴(はかま)とは
袴といえば、成人式や結婚式で女性が着用する「きらびやかな着物のような服装」をイメージする人も多いのではないでしょうか。 たしかにその服装も袴と呼ばれています。ですが、じつはそのイメージは少し違っているんです。 正式な袴とは「下半身に着用する伝統的な衣類」のことを指しています。これがどういったイメージなのかというと、次の通り。
  • 殿様が下半身に着用した大きなズボン
  • 流鏑馬(やぶさめ)をする人が下半身に着用している衣類
冠婚葬祭や成人式といった公の場における正装としてしられており、古くから利用されている袴は、現代に至るまでに姿かたちを変化させ、その種類も複数登場しています。

袴の作りついて

袴の作りついて
下半身に着用する袴、この衣類には複数の種類があり、袴ごとにその「作り」が少しずつ違っています。 とくに袴紐(はかまひも)の結び方は、大きく分けて4種類の作りで構成されているため、1つずつご紹介していきます。

一文字

一文字とは、横一直線に袴紐が形作られるように結ぶ巻きつけ方です。 袴紐が下に垂れてしまわないように短く固定する方法であり、漢数字の「一」をイメージした結び方。礼服の結び方としてもっとも一般的な作りです。

十文字

十文字とは、袴紐を縦と横の両方に結び形作る巻きつけ方です。 漢数字の「十」になるように紐を短く固定する結び方。 江戸時代から流行し始めた新しい作りですが、広く一般的な結び方であるため、現代でも礼服の結び方として利用されています。

結びきり

結びきりとは、袴紐の巻き付け部をギュッと締め付けて見せる結び方です。 ネクタイのように一部で固定しており、袴紐が外に飛び出ないような作りとなります。

蝶結び

蝶結びとは、古い歴史を持つ作りのひとつであり、公家(当時の偉い人)の礼装の結び方として一般的です。 現代でも利用される場面が多く、蝶結びをつかった衣類や履物は、現代でも形を変えて登場しています。 また女物の袴の場合には、蝶結びした袴紐のたれを長く見せることでオシャレに着こなす方法などもあります。

袴の種類について

袴の種類について
様々な作りを持つ袴ですが、その種類・デザインが豊富にあるのをご存じでしょうか? 袴の種類によって利用用途が違っていたり、着用するシーンも変わってくるため、合計8種類の袴について詳しく解説していきます。

表袴(うえのはかま)

表袴とは、平安時代に公家の正装として利用されていた袴です。 大口袴という紅色の肌袴(インナー)の上に着用する袴のことを言い、歴史物語の竹取物語で登場する天皇など、高位の男性が着用している袴となります。 高位の男性が着用していたということもあり、高位を照明する冠と合わせて着用する場面が多い服装です。

指貫(さしぬき)

指貫とは、裾口に紐を通し着用時にキュッと紐をくくることができる袴のことを指し、くるぶしあたりをふんわりした見た目にできる袴です。 裾が地面に擦れないため、移動しやすく着衣ズレなども起きにくい特徴を持ちます。また、この袴は平安時代~中世あたりまで利用されていました。

水干袴

水干袴とは、庶民および武家の間で広く浸透した袴です。 袴生地の接着に糊(のり)を使わず、水を付けて張っていたことから「水干」という名前が付き、簡素な生地が特徴的な服装です。 染物によって色や模様を付けた水干袴や、絹や麻布など様々な生地が使用されていたため、みやこ庶民の一般着としても広く流通していました。

狩袴

狩袴とは、文字通り動物などの狩りを行う際に着用されていた袴のことを言います。 袴の特徴としては、指貫(さしぬき)のように、裾を絞る紐が付いています。野外を動く際にできるキズや汚れに対応するために、丈夫な麻が利用されていました袴です。

緋袴(ひのはかま)

緋袴とは、おもに巫女服として女性が着用する袴のことをさし、紅色の見た目が特徴的です。 緋袴は現代でも神社の巫女服として一般的に流通しています。緋袴には引きずって利用する「長袴」、足首までの「切袴」の2タイプが存在します。

襲の袴

襲の袴とは、菱餅のように複数の長着を重ねて着用する袴のことを言い、高位にある女性が着用するカラフルな袴です。 舞楽など、きらびやかな衣装としても有名であり、日本画に登場する女性袴としてよく描かれています。

座敷袴

座敷袴とは、中世あたりから浸透した客間などで人を向かい入れる際に着用する正装のことを指します。 この袴には「馬乗袴(うまのりはかま)」「行灯袴(あんどんはかま)」の2タイプがあるので、以下でそれぞれをご紹介していきます。

馬乗(うまのり)袴

おもに乗馬時に利用する袴であり、裾が邪魔にならないように裾元を広めに仕立ててあるのが特徴的な袴です。

行灯袴

スカート状につくられた袴であり、筒状の行灯(あんどん)に似ていることから命名されました。 元々女性用の袴として利用されていましたが、歩きやすさが人気を集め男性も略装・普段着として着用していた袴となります。

山袴

山袴とは、正装・普段着として利用されていた他の袴と違い「作業用」として利用された袴のことを指します。 山袴は、用途によって6種類に分けられますので、1つずつご紹介していきます。

四幅袴・四布袴

四幅袴・四布袴とは、ひざ丈の半ズボンのような袴のことを指します。 中世の下級武士や農民などが主に着用しており、動きやすさ、汚れにくさを重視した袴です。

立付・裁付・裁着

立付・裁付・裁着袴は、すね・くるぶしに紐が通された袴のことを指します。 おもに武士が利用していた袴ですが、動きやすさやケガのしにくさから、農山村で農民の作業用としても親しまれていた袴です。

軽衫(かるさん)

軽衫とは、武士が旅行着として利用していた袴の一種であり、現代のズボンとほとんど変わらない見た目をしています。 中世末期に登場したこともあり、来日したポルトガル人の服装をモチーフに作成したと言われています。

武道袴

武道袴は、現代でも武道用に利用されている袴のことを言い、弓道や剣道、合気道など様々な用途に利用されています。 スカートのようなヒダをつくり、キレイな動きを見せる着物として男女問わず人気を持つ袴です。

雪袴

雪袴とは、主に寒冷地など雪原地方で用いられていた袴の一種です。 ひざ下で紐をくくり利用されていました。雪が降った場所を歩きやすいように改良された袴であり、裾位置を短くすることによって雪汚れなどを防止していたと言われています。

もんぺ

もんぺとは、第二次世界大戦中に日本に普及していた袴の一種であり、東北地方の農作業服として広まったと言われています。 一般的に女性の着用が多く、ストライプやチェックといった豊富な柄、またカラーバリエーションも多数あるため、昭和初期にはオシャレの一環としても利用されていたそうです。

男性における袴の歴史

男性における袴の歴史
日本の歴史からもわかる通り、男性・女性を問わず広く親しまれていた「袴」、このうち男性が着用する袴にはどういった歴史があるかご存じですか? まず、この服装は弥生時代あたりから着用され始めた服装であり、近世紀では、おもに男性が着用する礼服として浸透していました。 もちろん女性用の袴もありますが、神道を進む巫女服や貴族のたしなみであった弓道着として利用されるのが一般的であり、その時代は男性中心の服装だったと言えます。

大正時代を含む近代にはいると、学生の通学着として袴が利用されるようになりました。 当初は袴のバリエーションが増えていたのですが、海外文化の浸透によってその数は少しずつ減り、現代では和装の結婚式以外ではなかなか見られなくなっています。

ただ長い歴史を持つ袴、少しずつその利用頻度が減っていますが、京都など日本文化の残る地では、観光向けに着付けをしてもらえるお店なども多数残っています。

成人式での袴の着方のコツと注意点

成人式での袴の着方のコツと注意点
「成人式に袴を着てみたい」それなら、袴の正しい着方のコツと注意点を知っておきましょう。 まず、成人式で着る袴を選ぶときには、他の人と色がかぶってしまわないように、メインカラーに合わせて補色を組み合わせます。 たとえば、青とオレンジ、緑と赤というように、色の組み合わせによってはオリジナリティある袴にできます。

また、注意点としては袴選びをするときに、必ず試着することをオススメします。 なかには自分と合わないカラーや組み合わせ、着付け方もあるので、成人式で「失敗した…」と思わないためにも事前に確認しておきましょう。

まとめ

以上、日本での歴史が深い着用服である「袴(はかま)」の作りや種類、そして歴史について解説しました。 現代では、成人式等に着用する場面がある袴、一生に一度だというのなら、ぜひ事前に試着を行い、満足のいく袴を選んでいきましょう。

袴が登場した当時は上位の天皇等が着用する礼服でしたが、現代に至るまでにたくさんの種類に派生し、ズボンのような動きやすい服装へと変化していきました。 大河ドラマなど歴史物語でも多数登場する袴、この機会に袴の歴史を学んでみてはどうでしょうか。
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