【伝統芸能の茶道】茶道とは?歴史や作法を解説

茶道と聞いてどのようなイメージを浮かべるでしょうか。何となく難しそうな印象を持っている方も少なくないでしょう。 茶道は日本の代表的な伝統芸能です。茶道には細かな作法がありますが、一つひとつの意味をしっかり理解すれば初心者でも丁寧な振る舞いができます。 本記事では、茶道とはそもそもどのようなものなのか、歴史や作法も含めてご紹介します。格式が高そうという印象を持っている方も、ぜひ本記事の内容を参考にしてみてください。

茶道とは?

茶道とは?
茶道とは、心を落ち着かせながらお茶をたてて客人にふるまう儀式のことです。茶の湯ともいわれます。粉状の抹茶と湯を茶碗に入れ、竹でできた茶筅で攪拌してたてます。 茶道ではお茶のたて方やいただき方、座り方、礼の仕方、立ち方、歩き方の動作にさまざまな決まりがあり、これを作法といいます。この作法は客人をもてなしお茶をおいしく差し上げるため、また客人がもてなしを受けてお茶をおいしくいただくためにできたものです。

単にお茶をふるまったりいただいたりするだけでなく、亭主と客人との精神的な交流を重んじる精神性・思考、そのための茶室や庭、茶室のしつらえ、茶道具の選別・鑑賞、ふるまわれる料理、手前作法などの芸術が融合した総合芸術ともいえるでしょう。 客人をもてなす茶道の精神は、現代の日本人のおもてなしの精神にも通じるものがあります。おもてなしの心に触れながらお茶を楽しむことこそが、茶道で大切にしなくてはいけないポイントです。

茶道の歴史

茶道の歴史
茶道の歴史は鎌倉時代、日本に禅宗を伝えた栄西が中国から持ち帰った茶の種を宇治の明恵上人に送ったことから始まったとされています。これこそが宇治茶の起源です。茶の栽培が普及すると、茶を飲む習慣が一般に徐々に普及していきました。 栄西は1214年に茶とともに『喫茶養生記』を源実朝に献上し、武士階級にも茶が広まるきっかけとなったとされています。中国の禅寺の清規をもとに著したとされる道元の『永平清規』には、茶を供する際の儀礼・作法である茶礼が説かれています。

鎌倉時代最末期には、後醍醐天皇や光厳天皇の宮廷で飲んだ茶の銘柄を当てる闘茶という一種の博打が催されました。この博打は建武の新政・南北朝時代・室町時代には庶民や武士の間でも流行。あまりの流行に、武家法で禁じられるほどだったとされています。 同時期、本場中国の茶器である唐物がもてはやされ、大金を使って盛大な茶会を催す唐物数奇が大名の間で流行しました。この流行は15世紀後半まで続いたとされ、これに対し足利義政の茶の師匠である村田珠光が茶会での博打や飲酒を禁じ、亭主と客との精神交流を重視する茶会のあり方を説きました。これが茶の湯の一様式である、わび茶に通じています。

わび茶はその後、堺の町衆である武野紹鴎やその弟子の千利休によって安土桃山時代に完成されました。 江戸時代前期までは茶の湯をたしなむのは大名や豪商などが中心でしたが、江戸中期に町人階級が経済的勃興すると飛躍的に茶の湯人口が増加。江戸千家初代川上不白などにより新たな稽古式として七事式が考案され、庄屋や名主、商人などの習い事として日本全国に普及していきました。 一時本来の茶道とは外れた行いが流行し遊芸化の傾向が進むこともありましたが、これにより本来の茶道の目的である、人をもてなす際に現れる心の美しさという概念が強調されるようになったとされています。各流派による点前の形態や茶会様式の体系化など徐々に様式が整備されていき、茶道本来の精神を見直すことで現在の茶道が完成しました。

茶道の作法とは?

茶道の作法とは?
茶道の作法はハードルが高いと感じる方も多いかもしれませんが、ポイントを押さえれば難しくありません。ここでは、茶道の準備、茶室での座り方、茶菓子の頂き方、お茶の頂き方、道具の拝見の仕方をご紹介します。

準備

茶道ではお茶碗を傷つけてしまうのを防ぐため、茶室に入る前に腕時計やアクセサリーを外します。腕時計を外すのは、何度も時間をチェックするのが茶室の亭主に対して失礼に当たるためという理由もあります。 茶会に持参するのは、懐紙や楊枝などの必要なものだけです。他の荷物は邪魔にならないよう、まとめて風呂敷などで包みましょう。

茶室での座り方

会を催す亭主の近くには、主賓である正客が座ります。次いで次客、三客、お詰めの順です。三客は亭主とやり取りをして茶会を進行します。お詰めは回ってきた茶道具を片付けるなど、茶会のサポート役ともいえる役割です。 初めは正客や他の招待客の連れとして茶会に参加する場合が多いでしょう。その場合は正客や招待客の次に入るようにすると安心です。また茶室に入る前に正客が主体となり茶室へ入る順番をあらかじめ打ち合わせしてくれるケースが多いです。不安であれば、順番はお任せするのもよいでしょう。 茶室では、畳のへりを踏まないように気を付けるのもポイントです。全員が茶室に入ったら、最後のお詰めが音を立てて入り口のふすまを閉めます。これが全員入室しましたという合図です。この音が聞こえたら、裏口から亭主が入ります。

茶菓子の頂き方

茶菓子を頂くときも畳のへりに注意しましょう。座るときや茶菓子を頂くとき、お茶を頂くときはすべて畳のへりの内側で行います。これは、戦国時代に相手に攻め込まない意思を表明した名残です。菓子皿はへりの外側、懐紙はへりの内側に置き、箸で茶菓子を移動させます。 茶菓子を落としてしまうのを防ぐために、懐紙を束の状態で使いましょう。茶菓子を取ったら、懐紙の隅を使い箸の汚れをぬぐいます。

また菓子皿や取り箸は共有するもののため、茶菓子がのせてある面や口が触れる部分には極力触れないように心がけます。箸は左手で受け、右手で持ち直します。お皿の表面にカンと当ててそろえるのはNG行為となるため気を付けましょう。 茶菓子を食べ終えたら、カスがこぼれないように下から懐紙を折り、一番上の一枚以外の束は下に置きます。楊枝を挟むように懐紙を縦に折り、楊枝の汚れをふき取りましょう。楊枝をケースに戻したら、懐紙と一緒に束の中へ挟み込みます。

お茶の頂き方

お茶を頂くときは、まずはお茶碗を畳のへりの内側へ移動させます。次の方がいる場合は、「お先にお相伴させていただきます」と声を掛けましょう。お茶碗を取る前に亭主に向かい「お点前頂戴します」と一言掛けます。 お茶碗を右手でとり、左手に乗せたら時計回りに茶碗を回します。正面を亭主の方へ向けて、右手に添えてお茶を頂きましょう。飲み終えたら正面を自分の方へ向けへりの外へ移動させ、次の方へ回します。

道具の拝見の仕方

お茶を頂いた後は道具の拝見があります。 畳のへりの外側に置き、両手をついて拝見しましょう。手に取るときは高い位置に持ち上げず、低い位置で拝見します。お茶を頂くときと同じように、次の方に「お先に」と声をかけてから拝見するのが作法です。 抹茶が入っている器は中身をまき散らさないように注意しましょう。フタを取り内側の花押や抹茶の景色を拝見するときも、ひっくり返さないようにしてください。

まとめ

茶道は古くから歴史ある儀式です。茶道は難しいものという先入観を持つ方も多いかもしれませんが、一つひとつの作法をしっかり理解し丁寧にふるまうことで、見た目も美しい所作になるでしょう。
無効化する