青森県指定伝統工芸品、津軽びいどろについて

青森県指定伝統工芸品、津軽びいどろについて
透明なグラスに色鮮やかな模様が特徴的な「津軽びいどろ」は、夏に使いたくなる爽やかで可愛らしいイメージを持つ青森の伝統工芸品です。そして、この津軽ビードロには面白い特徴とバリエーションに富む製造技法があるのをご存じでしょうか。

この記事では、青森県指定伝統工芸品に指定されている「津軽びいどろ」の特徴や製造技法、そしてこのグラスが持つ魅力について解説しています。現代でも人気を誇るグラスであることから、この記事を読み終わったころには、キレイな津軽びいどろを購入したくなっているかもしれません。

津軽びいどろとは?

津軽びいどろとは?
「津軽びいどろ」とは、ガラス素材を手作りで製造する和製ガラスのことを指し、元はポルトガルより伝えられた「ビードロ」をルーツとしています。また、津軽びいどろは、漁業で利用されているガラス浮玉を作る技術を活用して製造された伝統工芸品であり、青森県指定伝統工芸品に指定されています。

「津軽びいどろ」はその美しいデザインと独特な世界観をもっていることから、濃くない人気だけでなく、海外からの注目が集まっている伝統工芸品なんです。

津軽びいどろの歴史

津軽びいどろの歴史
津軽びいどろのルーツとなる「ビードロ」は江戸時代~明治時代初期に登場しました。当時、南蛮貿易が盛んに行われていた際、海外のガラス製造技術が伝わったことによって日本中でビードロ製造が普及しました。また、技術面の発展が著しい日本では、その後、様々な技法が派生していきました。

もちろん、今回の主役である青森県のつがる市にも同じようにビードロの製造技術が伝わっており、製造当初は漁場で利用するガラス浮玉として利用されていました。しかし、ここに日本海に面する大規模な砂浜である「七里長浜」の砂を原料として利用したところ、深みのある緑色のビードロが完成したことによって、インテリア・観光向けの伝統工芸品へと形を変えていったのです。

明確に「津軽びいどろ」として名称ができたのはビードロの登場から数百年後の1977年。その後、津軽びいどろの技術と美しさが評価され、1996年には「青森県伝統工芸品」に指定されました。
変わらない製造方法が人気を集めており、現代ではさらにバリエーション豊富な面白い「津軽びいどろ」が登場しています。

津軽びいどろの特徴

津軽びいどろの特徴
津軽びいどろは、インテリアとして製造されることが多く、タンブラーやワイングラス、おちょこ、盃(さかずき)など大小さまざまなデザインのものが販売されています。色付けされたグラスは日本の四季を表すことが一般的であり、光を反射してグラスの周囲をキラキラと輝かせるのが特徴的です。

津軽びいどろのカラーバリエーションはなんと100色以上もあり、デザインや色味の異なる魅力的なビードロは、光に透かしたときにできる万華鏡のような影を作ります。

津軽びいどろの製造技法

津軽びいどろの製造技法
色鮮やかな津軽びいどろは、4つの製造技法を利用して作られています。
作り方によってデザインが大きく変化する「津軽びいどろ」、一体どのように作られているのか、ひとつずつ見ていきましょう。

宙吹き(ちゅうぶき)

「宙吹き」とは、1200℃の灼熱で溶かしたガラスを「吹き棹(ふきざお)」に巻きつけ、職人が息を吹き込みながらビードロを膨らませる製造技法です。「拭き棹」をくるくると回転させながらビードロを膨らませる様子は、TVなどのメディア紹介も多く、ガラス製造技術の中でも難易度が高い技法だと言われています。

津軽びいどろの原点は、この「宙吹き」にあり、現代でもこの製造方法で種類豊富な津軽びいどろが作られています。

型吹き(かたぶき)

「型吹き」とは、1200℃の灼熱で溶かしたガラスを「吹き棹」に巻きつけ、完成形にかたどられた既成型に吹き込むことによってビードロを成形する製造技法です。型を用いて成形することから、均一性のある津軽びいどろを製造でき、製造の難しいタンブラーやワイングラスなどを製造する際に利用されます。
また、型吹きに用いる「型」は主に次の既成型が用いられています。
  • • 金型
  • • 木型
  • • 石膏型

スピン成型

「スピン成型」とは、遠心力を利用してビードロを形作る製造技法です。専用の既成型に溶かしたガラスを流し込み、回転させて型の内部にガラスを行き渡らせます。
平べったいお椀等に利用されることが多く、ガラスを入れるタイミングや回転速度によって、デザインやガラスの色が変化するという特徴を持っています。

オーナメント成型

「オーナメント成型」とは、青森県で盛んな漁業で利用されるガラス浮玉を製造する際に用いられる技法です。棹に溶かしたガラスを巻きつけて小さなガラスの塊をつくり、そのまわりに何重ものガラスを重ねて作り出します。
丸い球体状の津軽ビードロをつくり出すオーナメント成型は、最終的に麻紐で結ばれ、漁船に取り付けられます。

津軽びいどろの魅力

津軽びいどろの魅力
デザイン性に富む津軽びいどろは、大きく分けて4つの魅力を持つ伝統工芸品です。
最後に、宝石のような妖美さをもつ津軽びいどろの魅力を見ていきましょう。

色彩の美しさ

津軽びいどろの魅力は、なんといっても色彩の美しさにあります。キラキラと輝く宝石のようなガラス素材には、100種類以上の着色が行われます。
全て季節をイメージした美しい色彩のものばかりで、季節にあわせたおしゃれなビードロが多数販売されています。光が透けて影ができた部分には、ビードロ素材の色がそのまま映ることから、まるでステンドグラスのような美しさを感じる伝統工芸品なんです。

繊細なデザイン

津軽びいどろはひとつひとつを職人の手で製造していることから、職人の熱意がこもった繊細なデザインを楽しめます。丁寧に製造されていることからガラス製造で発生する気泡も少なく、透き通るような薄緑の透明ガラスを楽しめます。
また、津軽びいどろの繊細さを利用し、青森の特徴でもある「リンゴ」「ねぶた祭」などをイメージしたビードロも製造されています。

色付きガラスの鮮やかさ

津軽びいどろが人気の理由は色付きガラスを楽しめる部分にあります。
色鮮やかな着色が施されたガラスを津軽びいどろに組み入れることによって、光の反射によってキラキラと反射するキレイなビードロが完成します。津軽びいどろには、季節をイメージした着色が行われることから、四季に合わせた津軽びいどろを利用できます。

職人の技

津軽びいどろは4つの技法を用いて製造されていますが、その中でも津軽びいどろの原点と呼べる「宙吹き(ちゅうぶき)」は熟練の職人しか製造が難しいと言われています。
長い経験を経て製造されるビードロは均一性のあるキレイな仕上がりとなっているため、これこそ職人の技が光る伝統工芸品だと言えます。

まとめ

以上、青森県の伝統工芸品である「津軽びいどろ」の特徴、技法、魅力について解説しました。

宝石のような美しさを持つキレイな和ガラスである津軽びいどろ。江戸時代から歴史を持つ、ロマンをくすぐる魅力的な伝統工芸品です。グラスやタンブラーなど日常利用もできる工芸品ですので、この機会にひとつ購入してみるのもいいかもしれません。
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