和にかかせない扇子(せんす) 歴史や種類について

扇子とは

扇子(せんす)とは?

扇子は、扇いで風を起こす道具の一つのことです。かつては扇(おうぎ)と呼ばれており、時代劇なんかでもお殿様が使うシーンもよく見かけられます。現代でも棋士が使っていたり、外国人からのお土産としても人気で日本の文化を表すものにもなっています。

扇子の構成

扇子の構成
扇子は主に3つの作りで構成されています。 1つ目は「骨」です。一般的な扇子だと折りたたんだ状態から段状に展開していきます。この段を作っているのが骨で、木や竹から作られているものが多いです。なお、持ち手の部分は特に太く、先端に向かうにつれてだんだん細くなるように作られています。2つ目は「扇面」です。これは風を送るためにある和紙の部分のことです。
また、骨が開きすぎないようにする働きを持っています。この段が付いた紙に絵を描く技術というのは屏風などにもみられるように日本文化の中で特に発達してきた箇所になっています。3つ目は「要」です。これは持ち手の近くにある骨を固定している部分で、これが壊れてしまうと扇子は使い物になりません。野球のキャッチャーを指す「扇の要」など、ここから生まれた言葉もたくさんあります。

扇子の歴史

時代劇でも見られる通り、古くから使われている印象のある扇子ですが、どのような歴史を持っているのでしょうか?起源や海外への広まりについて紹介します。

起源

扇子と似ている機能を持つものとして団扇(うちわ)があります。団扇は中国文明の早い段階から存在していました。しかし、折りたたみ式の団扇である扇子の起源ははっきりしていないところも多く、日本で生まれたという説や中国で生まれたという説があります。

海外への伝播

海外、特に西洋に扇子が伝わったのは、16世紀のことです。17世紀にはヨーロッパで扇子の制作が始まり、特にスペインでは扇子が広く受け入れられるようになります。「スペインの煽具」という名前でヨーロッパ全体に広がっていきました。女性の持ち物として愛用されていたようです。また、上流階級では扇子に関するマナーがあるなど文化や社会に欠かせないものにまでなっていきます。

扇子の種類

扇子の種類
扇子には数多くの種類があります。ここではその中の一部を紹介していきます。

夏の扇、冬の扇

これらは公家の方や能楽の場面で使われてきました。なお、夏の扇は今ある扇子の元にもなっています。なお、以前は蝙蝠扇と呼ばれており、裏面の骨は露出していました。

軍の扇、鉄の扇

これらは、戦いの中で使われていた扇子です。軍の扇は戦場で武将が持っていました。一方の鉄の扇は、護身具や鍛錬具として日常的に使用されていました。

舞扇、祝儀扇、飾り扇

舞扇は歌舞伎や日本舞踊で、祝儀扇は冠婚葬祭で、飾り扇は飾り物として部屋で使われます。なお、祝儀扇に関して男性は白色、女性は金色や銀色のものを使うことが多いです。なお葬儀の際は黒色の「不祝儀扇」を用います。飾り扇は飾り物専用に作られているので通常の扇子のように使用することはできません。中には、開くと円形になるものも存在しています。

扇子の用途

扇子には様々な用途が存在します。上手に扇子を使うための第一歩なので知っておくと便利です。

風を送る

いわゆるうちわと同じような使い方です。暑さを紛らわすことができます。なお、繊細な構造のものが多いので、強く扇ぎすぎるのはNGです。扇ぐときは、大切に使いましょう。

礼儀作法として口を隠す

笑うときなどに口を隠すことに使うことができます。笑うときに相手に歯を見せないことで上品な印象を与えることができます。

贈答用

扇は昔から贈答用の品としてもよく使われていました。特に江戸時代、正月に親しい相手の白扇を送る習慣があったと言われています。なお、現在では落語や能楽で出演者などに配ることがあるようです。

芸における持ち物

能や狂言、仕舞で用いられます。曲目や役柄、流派において扇子の種類は事細かに決まっており、舞台を充実させるのに一役買っています。他には歌舞伎でも使われます。特に劇中で昔の話を語る「物語」というジャンルでは扇を使う場面が多いです。落語では、食事の場面で箸に見立てて使ったり、剣に見立てて使ったりすることでお客さんの想像力を掻き立ててくれます。扇子を使うことにより、落語を目でも楽しむことができるようになっています。

呪具

扇子は一種の結界としての役割を持ちます。葬儀の際に喪主に挨拶する場合などでは座って、胸元から畳んだ状態の扇子を自らの膝前に置き、それを境にするように相手に礼を言います。これには穢れを外に持ち出さないという考え方から来ています。

遊び道具

平安時代の貴族は基本的に暇を持て余すことが多く、蹴鞠遊びなど様々な遊びが発達してきました。扇子もその遊び道具の一つとして貴族たちの目に留まります。投扇興(とうせんきょう)と呼ばれる、扇子を的に向かって投げ的を落とす遊びに用いられます。江戸時代には、水を張った茶碗に渡した割り箸を扇子で叩き折り、水をこぼさなければ勝ちとする「腕さだめ」などが行われていました。

張扇

講談師が講談の最中に、話にテンポや臨場感、音を出すために釈台をたたきます。

まとめ

扇子は日本、そして世界で長年使われてきたという歴史があります。そのように長年使われてきたのは、機能性、利便性、そして用途の多様性に優れているからです。たまには、扇ぐだけではなく、遊び道具などとして使ってみると新しい世界を発見できるかもしれません。

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