香木とは?香木の種類について解説

香木が日本に伝わったのは6世紀末のこと。以来、日本で香木は仏前への供香や彫刻、教養や趣味の分野などで利用されてきました。室町時代には精神性を深め、さまざまな伝統文化を取り入れた「香道」として確立されています。

日本人が築いてきた香りの文化の中心にあるのが、沈香や白檀などの香木です。最近では香木の癒し効果が注目され、ルームフレグランスなどで暮らしの中に採り入れる方も増えてきました。今回は日本人の暮らしを香りで彩ってきた香木の種類を紹介します。

香木とは

香木とは

香木とは良い香りを放つ樹木、またはその樹木から採れる香料全般のことです。一般的には古くから日本で珍重されてきた伽羅・沈香・白檀の3つを指します。伽羅・沈香・白檀はそれぞれにどのような特徴をもつのでしょうか。基本情報や特徴などを紹介します。

白檀

白檀(びゃくだん)は甘く高貴で、静寂を感じさせる香りが特徴です。お線香にも用いられているため、親しみを感じる方も多いでしょう。白檀の英名はサンダルウッドで、香水にも用いられています。

原産地はインド。他の植物に寄生して栄養を吸収する「半寄生」性の樹木で、幹が灰白色のため白檀と呼ばれます。白檀は特有の香りを放つまでに少なくとも30年以上、より上質な芳香を放つには80年以上かかるとされるため、貴重な香木として扱われてきました。

沈香

心を落ち着かせる甘い香りが特徴的な沈香(じんこう)は、ジンチョウゲ科の植物が長い時間をかけて固めた樹脂で、産地はベトナム・カンボジア・インドネシアなどです。 原木に香気はなく、傷ついた樹皮が傷を治すために植物自身の出した樹脂が、長い時間をかけて生成されて沈香になります。樹脂が生成されるまでに少なくとも50年かかり、香り高い沈香が生成されるには100〜150年の歳月がかかるとされています。

沈香は生成に時間がかかる上に傷などの偶然性にも左右されるため、希少価値が高いのです。

伽羅

沈香の中でも最上品のものを伽羅(きゃら)と呼びます。ベトナムのダナンなど、わずかな地域でしか採れないため、伽羅の価値は金に等しいともされてきました。 沈香と伽羅の香りの違いは、含まれる成分の差であると解釈されていますが、詳しいことは分かっていません。沈香の粉がさらさらと乾いているのに対して、伽羅は多少の粘り気をもつのが特徴です。

伽羅は多様で複層的な香りを持っており、その香りは「幽玄な雰囲気」、「幻想的で上品」、「甘くてスパイシー」などと多様に表現されます。

まとめ

香木の香りの分類法として、香道で体系づけられているのが「六国五味(りっこくごみ)」です。香木は銘のあるものだけでも数百種におよびます。六国五味とは、それぞれの違いを産地と香味の組合せで分類するものです。 「六国」は産地による品質の違いを指すもの。「五味」は香木のもつ匂いの特徴を、味覚になぞらえて表現しようと試みたもので、次のように分類されています。

【六国】

  • ●伽羅(きゃら):ベトナム産
  • ●羅国(らこく):タイ・ミャンマー産
  • ●真那伽(まなか):マラッカ産
  • ●真南蛮(まなばん):マラバル産
  • ●寸聞多羅(すもたら):スマトラ産
  • ●佐曾羅(さそら):サッソール産

【五味】

  • ●酸:すっぱい
  • ●苦:にがい
  • ●甘:あまい
  • ●辛:からい
  • ●鹹:塩辛い

まとめ

日本人は独自の精神性で、香木を香道にまで高めました。香道では香りを「聞く」と表現します。一説には、香りを通じて自然の声を聞き、自然と一体化して自らを見つめ直すためだそうです。 近年、香木が注目されているのは、自然との一体感を通じて、癒しを得られるためかもしれません。忙しい現代人も、ときには香木の香りを聞いて、和の香りに癒やされてみるとよいでしょう。
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