目次
精進料理(しょうじんりょうり)とは?
精進料理とは野菜や豆腐などの植物性の食材のみで作った料理のことです。肉や魚を使ってはなりません。仏教の僧侶はこの料理を食べています。なお、現代日本でも冠婚葬祭やお盆などに一般の方でも精進料理を食べる文化が残っています。
また近年では、健康食としても注目度が上がっています。西洋のビーガンと似ているところもあり、世界全体で肉を除いた食事の文化は存在しており、その一つの形態が精進料理なのです。
また近年では、健康食としても注目度が上がっています。西洋のビーガンと似ているところもあり、世界全体で肉を除いた食事の文化は存在しており、その一つの形態が精進料理なのです。
精進料理(しょうじんりょうり)の特徴
そもそも「精進」というのは、仏教用語で「美食や肉食を避け、粗食や菜食によって精神修行をする」という意味を持っています。しかし、食事が質素すぎる、また同じような食事をしているとどうしても飽きてしまうのが人間というものです。そこで、菜食は様々な発展を遂げてきています。
例えば、大豆です。精進料理ばかり食べていると肉や魚を食べないことになるためタンパク質が不足しがちになります。そのタンパク質を補ってくれるのが「畑の肉」と呼ばれる大豆です。大豆にはタンパク質が豊富に含まれています。しかし、大豆の生食は困難であるため様々な調理の工夫がなされてきました。その結果、豆乳やみそ、しょうゆ、湯葉などといった大豆原料の食品が発達していきます。このように精進料理という制限が付いたことで発達していった食文化もあるのです。
例えば、大豆です。精進料理ばかり食べていると肉や魚を食べないことになるためタンパク質が不足しがちになります。そのタンパク質を補ってくれるのが「畑の肉」と呼ばれる大豆です。大豆にはタンパク質が豊富に含まれています。しかし、大豆の生食は困難であるため様々な調理の工夫がなされてきました。その結果、豆乳やみそ、しょうゆ、湯葉などといった大豆原料の食品が発達していきます。このように精進料理という制限が付いたことで発達していった食文化もあるのです。
禁忌対象 禁葷食(きんくんしょく)
精進料理の禁忌対象になっている食材があります。それは肉食と五葷です。
肉食
仏教の僧は動物の殺生を禁止しています。そのため、動物が死んだことで生まれる魚や肉を食べることは避けられるのです。正確な教えでは、精進料理には牛乳などの乳製品というような動物からできている食材は使わないのが基本です。ただし、精進料理の中にはこっそり動物の出汁を使っていることもあるそうです。
五葷(ごくん)
そもそも五葷とは、にんにく、ねぎ、にら、たまねぎ、らっきょうのことです。これらは薬味としても使うことができ煩悩を刺激するため精進料理では禁止されています。また、匂いが強いことも避けられる一つの要因のようです。この5つの食材に加えて、山椒やショウガ、パクチーなども避けられることがあります。
日本の精進料理
歴史
日本の精進料理は禅宗が盛んになる鎌倉時代からどんどん発達していきます。平安時代までの日本の料理は魚や鳥といった肉が使われていましたが、味が薄く、自分の持つ調味料を振りかけて食べなければならないなど未発達な部分も数多くありました。
一方、鎌倉時代の精進料理は質素ではありましたが味付けはしっかりしており、肉体労働に励みエネルギーを必要とする武士や庶民にも満足のいく味付けがなされるようになります。江戸時代になると仏教の活動とは無関係に料理屋が精進料理を作るケースが増えていきます。
さらに精進料理から派生した本膳料理や懐石料理があります。現在はより豪華になっていますが、当時はとても質素なものでした。このように精進料理はアレンジを加えたりしながら現在まで生き残っています。
一方、鎌倉時代の精進料理は質素ではありましたが味付けはしっかりしており、肉体労働に励みエネルギーを必要とする武士や庶民にも満足のいく味付けがなされるようになります。江戸時代になると仏教の活動とは無関係に料理屋が精進料理を作るケースが増えていきます。
さらに精進料理から派生した本膳料理や懐石料理があります。現在はより豪華になっていますが、当時はとても質素なものでした。このように精進料理はアレンジを加えたりしながら現在まで生き残っています。
日本の精進料理の今
現在では、料理屋さんで精進料理から派生した懐石料理や本膳料理をよく見かけます。本格的な精進料理を楽しむために、寺院仏閣が行っている体験修行をするという手があります。特に1泊2日の体験などは夕食に精進料理が出されることも多いようです。また、海外のベジタリアンやビーガンの方に向けた手軽で安価に楽しめる精進料理も作られているようです。
献立の例
あるお寺で実際に出される精進料理の一例を紹介します。献立は以下の通りです。
- ごはん
- 白みその汁
- 湯葉、麩、シイタケの炊き合わせ
- 胡麻豆腐
- 紅葉麩、こんにゃく、栗、ごぼうなどの盛り合わせ
- しめじと青菜のおひたし
- 香の物
質素ではありますが、塩分の効きやすい食事でまた大豆由来の品物も多く入っており、タンパク質も十分に摂取することができます。
中国の精進料理
中国では精進料理のことを「素菜」や「素食」と呼びます。中国でどのように精進料理の文化が育まれてきたのか見ていきましょう。
歴史
今まで精進料理は仏教の修行の一つであると解説してきましたが、実は中国の精進料理は仏教の伝来より早く生まれています。殷の時代、儀式などの前には神に畏敬の念を示すため肉を食べるのを避けていました。後漢の時代になると仏教がインドから伝わり、より食に対して厳格になっていきます。修行僧は托鉢によってのみ食べ物を得ることができ、食事を行うのも午前中に限られました。
しかし、農耕社会では托鉢がなかなか受け入れられず、最終的には僧侶たち自らが山菜を採集したり農耕を始めることになります。托鉢が受け入れられなかった一方で、肉食の禁止は儒教の「仁」の考えにも通じるものがあり広く受け入れられるようになりました。南北朝時代(5~6世紀)になると文献にも精進料理を表す「素食」という言葉が出てきます。これは、仏教徒も増え精進料理の考えが中国全土に広がっていったことを示します。
隋や唐、清の時代には精進料理をおいしく食べられるようにどんどん進化していきます。その一方で、おいしくするためにこっそり動物性の出汁を使うこともありました。そのような進化もあり現在でも精進料理専門店があるなど、国民に親しまれています。
しかし、農耕社会では托鉢がなかなか受け入れられず、最終的には僧侶たち自らが山菜を採集したり農耕を始めることになります。托鉢が受け入れられなかった一方で、肉食の禁止は儒教の「仁」の考えにも通じるものがあり広く受け入れられるようになりました。南北朝時代(5~6世紀)になると文献にも精進料理を表す「素食」という言葉が出てきます。これは、仏教徒も増え精進料理の考えが中国全土に広がっていったことを示します。
隋や唐、清の時代には精進料理をおいしく食べられるようにどんどん進化していきます。その一方で、おいしくするためにこっそり動物性の出汁を使うこともありました。そのような進化もあり現在でも精進料理専門店があるなど、国民に親しまれています。
中国の精進料理の種類
中国の精進料理は提供される場所の違いで大きく4つに分けることができます。
- 寺観素菜
- 宮廷素菜
- 市肆素菜
- 民間素菜
寺観素菜
お寺で出されるものを指します。僧侶が毎日食べる質素なものと、来客用に出されるものがあります。一般的には来客用のものは少し豪華です。精進料理の基本がしっかり守られたものになっています。
宮廷素菜
唐から清の時代に宮廷で出されていたもの。専門の料理人が作り、歴代の皇帝から愛されていました。庶民が使わないような高価な生薬を使うこともあったようです。
市肆素菜
料理店で出されるもので、味や見た目を重視します。その結果、動物性の出汁を使われることも多々あります。
民間素菜
家庭で出されるものです。野菜を煮たり炒めたりした簡単にできるものが多いです。宗教上の理由で食べる場合と健康増進のために食べる場合があります。
調理法
煮物や蒸し物に加えて、揚げ物や炒め物も多く使われます。揚げてから蒸す、揚げてから煮るなど複合した調理法を用いることもあり、おいしく食べることができるように工夫が施されています。
朝鮮半島の精進料理
最後に中国、日本両国ともにお隣さんの関係である朝鮮半島の精進料理についてみていきます。
歴史
こちらは中国と異なり仏教の伝来とほぼ同時期に精進料理は伝えられます。禅宗の普及とともに精進料理は切り離せない修行の一つとして菜食文化が根付きます。最も精進料理が食べられていたのは新羅や高麗の時代であり、その後は仏教徒に限って食べられていました。しかし、1980年代になると精進料理専門店がソウル市内に生まれ再び脚光を集めています。
種類
中国の精進料理と同様に寺院、宮廷、料理店、家庭の4つに大別できます。また、昆布や海苔などの海藻も積極的に取り入れているのが特徴です。
まとめ
精進料理は仏教の言葉ですが、アジアを中心に今なおその文化が根付いています。さらに細かく見ていくと、日本、中国、朝鮮半島それぞれで少しづつ異なった精進料理の文化が育まれており、その土地に適した食事というのが生まれていることが分かります。中国や朝鮮半島に行ったら精進料理を食べて、日本のものとの違いを確かめるのも面白いかもしれませんね。